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日本設計 本社新オフィス 都市のようなワークプレイス

日本設計 本社新オフィス 新しいワークプレイスの在り方

think都市建築連続セミナー第6回  都市の未来と防災

IDEAS

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Design Insights ~もっと建築が楽しくなる~
歴史遺産と対話しながら再構築した複合施設
「Design Insights ~もっと建築が楽しくなる~」は、日本設計が携わった建築物において、設計担当者らのこだわったポイントを紹介するコーナーです。 今回は、東京 メトロ南北線の白金台駅近くの「港区立郷土歴史館等複合施設 ゆかしの杜」(以下、ゆかしの杜)をご紹介します。 撮影:翠光社 郷土歴史館やがん在宅緩和ケア支援センター、子育て関連施設などが入る複合用途の公共施設です。郷土歴史館では港区の歴史や文化を紹介する常設展のほか期間限定の特別展・企画展が開催されています。カフェやミュージアムショップもあり、建物は無料で見学できます。 建物は日本の公衆衛生の向上を目的とした研究機関「公衆衛生院」として、1938年に東京大学建築学科教授の内田祥三氏によって設計されました。公衆衛生院が2002年に埼玉県に移転すると長らく閉鎖されたままでしたが、港区は2011年に建物を保存しながら活用することを決定。その後、2016年から2年にわたる改修工事が行われ、「ゆかしの杜」として生まれ変わりました。 改修のポイントについて、日本設計理事の古賀大は「何を変え、何を護るのかを常に考え、『リビング・ヘリテージ(生きた文化遺産)』として保存と活用を両立できるようにした」と話します。 スクラッチタイルの壁面や連続したアーチといった「内田ゴシック」の特徴を備えた外観の改修にあたっては真正性あるいは真実性つまり、「本物であること」を意味する「オーセンティシティ」を大事にしました。タイルは、一枚一枚ハンマーで叩いて調べる打診調査を行い、劣化が著しい部分を張り替えました。新しいタイルはオリジナルと区別できるように微妙に色を変えています。また、この建物の特徴である小尖塔(ピナクル)の仕上げも新旧で若干色を変えています。これらは創建時以来の原材料と現代の修理箇所をあえて示すためです。   タイルは打診調査を行い、劣化が著しい部分を張り替えました   円形の吹き抜けを中心とした中央階段は、天井レリーフや手すりの装飾など創建当時の風格が残っています。階段状の講堂も、建設当初の多くの部材がそのまま残されていて、扉につけられたレリーフ(彫刻)や照明など、趣向を凝らしたデザインを楽しむことができます。講堂は現代の法令に則ると集会施設として利用できません。しかし私たちはこの美しい講堂を創建時に近い状態として保つことで、将来、また利用できるようになった際に活用してもらいたいと考えました。 円形の吹抜を中心とした中央階段。安全対策のための手摺や補助照明の追加を行い、 天井レリーフや手摺の装飾など創建当時の風格を残しています。 (撮影:翠光社) (写真左)旧講堂は館内でも特に来館者に人気です(撮影:翠光社) (写真中)クラシカルな照明器具 (写真右)演壇左右に飾られたレリーフ(撮影:三輪晃久写真研究所)   廊下では、当時使われていたエレベーターのボタンや暖房器具がそのまま残っています。「暖房器具も現在は使われていませんが、当時の雰囲気を感じられるようにあえてそのままにしています」(古賀)。足元に目を落とすと、扉の沓摺はバリアフリーのために平坦にしていますが、端の方は一部残してありました。「改変した痕跡がわかるようにあえて残しています」。タイルや床材も新しくした部分はオリジナルの原材料に似せつつも、同じには見せないようにしたそうです。古賀は「オリジナルと同じ形状のものを作ってしまうと、それは『偽物』になってしまうからです」と言います。 (写真左)エレベーターのボタンと注意書き (写真中)平坦化した沓摺は一部を残した (写真右)当時使われていた暖房器具 (写真左)旧講堂の扉の型板ガラス (写真右)「人造石研ぎ出し」で仕上げたコミュニケーションルーム近くの廊下の床   耐震化といった新しく手を加える部分においても、「新旧が調和しつつ区別できるデザイン」を取り入れました。2階にある郷土歴史館の体験型展示空間や1階のカフェには、斜め格子に強化ガラスを組み合わせた耐震補強工法を用いて、意匠を損なわないようにしました。 1階のカフェでは鋼材とガラス併用による耐震補強工法(大成建設が特許を持つT.G-Wall)を採用しました(撮影:翠光社) 改修前は廃墟のようでしたが、まちの文化財を未来に引き継ぎたいというたくさんの人々の思いによってこの改修が実現しました。「80年前の先達が創り上げた歴史遺産と対話しながら、私たちの技術で現代のニーズに合わせて再構築する、そして大切に次の世代に引き継いでいく。そういうことが期待されていると思います。」 本プロジェクトは今後の近代建築の保存活用における好例となることを期待しています。   特記なき撮影:日本設計広報室
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横浜⼭⼿で90 年続く歴史を継承する⼼の故郷となる⽊造校舎
横浜市中区山手町に位置し、歴史的保全や文化的環境を生かした景観形成が求められる敷地での本校舎を含む、新校舎2 棟を段階開発で行った横浜共⽴学園中学校⾼等学校 本校舎改修計画です。 計画を行う上では現状の高さ制限や日影規制、またそれ以外に本校舎も老朽化による改修が課題であったため、隣接する横浜女学院と共に、2013 年に山手町西部文教地区として区域を定め都市計画提案を行い、容積・最高高さの制限を緩和し、段階的な建替え計画を行いました。 外観の仕上げは文献より当時の仕上げに復元し、創建当時に近い外観に改修している(撮影/輿水 進)     築 90 年の⽊造校舎を次世代へ継承した本校舎 本校舎は1931 年 W・M・ヴォーリズ設計で1988 年に横浜市指定有形文化財第1 号の指定を受けた木造3 階建てです。既存の木造の空間を継承するため、耐震改修を行い、生徒利用が中心となるような木の改修計画としました。 改修を行う上で、ピアソン記念礼拝堂や階段等は元々の状態を残し、新しく改修した部分についても、重要度を整理し、元々の建築として重要度が高い諸室については既存の意匠(開口部やフローリングの幅60mm 寸法)は残した計画としました。また、現状の学園の使われ方に合わせて機能更新が必要な諸室についてはそれに合わせて計画しています。 本校舎 2 階ピアソン記念礼拝堂 礼拝堂を保存するため、内部空間は当時のまま保存し、外部から改修(撮影/輿水 進) 本校舎1階の中央ホール ミス・ルーミス記念室同様、床は竣工当時のまま継承し、階段部分は保存(撮影/輿水 進)   本校舎 1 階ミスルーミス記念室 フローリングは竣工当時の空間を継承するため、フローリングの意匠や幅 (60mm) は竣工当時のまま復元(撮影/輿水 進)   ⽊造校舎を次世代へ継承する耐震補強 木造の本校舎は1,2階とも階高が約4mと高く、ピアソン記念礼拝堂や食堂、図書館等の大空間の部屋を有している構造的特徴があります。耐震診断よりIw0.7未満(倒壊する可能性が高い)という結果となり、全体的に耐力が不足していることが判明しました。 改修にあたってはIw1.25を上部構造評点の目標とし、本校舎の意匠を尊重した耐震補強とするため壁を新規に設置せず、既存木摺壁の合板への仕様変更、床への合板の増し張り、木製筋交いの増設、梁の接合部の補強をすることで耐力を確保する方針としました。ただし、長辺方向に開口部が多いため、開口部への補強が必要となったのですが、通常のブレースによる補強では建物の意匠性が損なわれるため、鉄骨フレームを風景に溶け込ませる耐震補強を採用しました。 改修時の木材使用量としては、本校舎で 141.6㎥(0.049/㎡)、その他3期で計画した体育倉庫 25.0㎥(0.309/㎡)を使用しています。   窓回りの鉄骨補強部詳細図 既存と溶け込んでいる鉄骨フレーム (撮影/輿水 進) 竣工当時の床下部分は改修でもそのまま保存 (撮影/輿水 進)   整備計画以前は本校舎で生徒が利用できる部屋は少なかったのですが、整備計画後は授業や昼食時、休み時間に限らず、一日中生徒が利用できる空間にすることができ、これからの新たな100 年を継承できる木造校舎です。 昼休みや休憩時間に生徒が利用できる食堂(撮影/輿水 進) 生徒が利用可能な図書室(撮影/輿水 進)   南校舎からは常に本校舎が見え身近に感じられる(撮影/輿水 進)  
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南山大学におけるモダニズム建築群の保存再生と大学キャンパスの成長デザインへの取り組み
マスタープラン模型を囲むアントニン・レーモンドと所員(写真/レーモンド設計事務所提供) 名古屋市にある南山大学キャンパス(1964年創建)は、アントニン・レーモンドが「自然を基本として」をコンセプトにマスタープランから設計まで手掛けたモダニズム建築の名作です。日本建築学会賞(1964年)を受賞し、docomomo100選(2003年)に選定されています。 その特徴は、緩やかな丘の尾根をメインストリートとし、櫛状に建物を並べ、その間に緑が入り込むマスタープランです。赤土色のコンクリート壁に映りこむ、庇やルーバーによる美しい陰影を持つ建築群がつくり出すキャンパス景観は、アントニン・レーモンドの設計思想が現在まで伝えられた貴重な遺産と言えるでしょう。   増築建物と調和したキャンパス景観(写真/滝田フォトアトリエ 滝田良彦) 創建当時から学生の記憶に残る大教室の再生(写真/滝田フォトアトリエ 滝田良彦)   南山大学は、この文化的価値を資産として活かす方針を固め、本キャンパスに全学部を統合する計画に取り組みました。そして新たに学生を受け入れるためのキャンパスの再編を実現しました。 日本のモダニズム建築は、文化財として未指定のものが多く、保存への取り組みや法制度による支援が十分とは言えません。老朽化により取り壊されることも珍しくなく、本キャンパスも建て替えを検討した時期がありました。しかし、キャンパスの成長戦略の中でモダニズム建築群およびマスタープランの価値を改めて確認し、本キャンパスのアイデンティティの力強い継承につなげることにしたのです。   「重要文化財(建造物)保存活用計画策定指針」に準拠して、「保存部分」「保全部分」「その他部分」を設定。関係するすべての方々と共有し、長期間におよぶプロジェクトに対応したガイドライン   1964年と2019年の鳥瞰写真(写真左/北澤興一氏所蔵、写真右/滝田フォトアトリエ 滝田良彦)   キャンパスのプログラムの再編 より質の高い教育と研究を提供し、他学部・他学科間での交流が活性化することを重視したプログラムの再編を行いました。教室・食堂・クラブハウスの増築、教員研究室とセミナー教室、ロッカー室、ラーニング・コモンズへの改修等、キャンパス全域の外構整備について、延べ面積約15,300㎡の増築工事(2棟)、約27,400㎡の改修工事(16棟)を7年度をかけて行いました。   「自然を基本として」を体現する校舎の増築 アントニン・レーモンドの設計思想、マスタープランを反映し、外部との連続性を意識した棟配置、自然採光と自然通風を基本とした施設計画としました。丘陵地の特性を活かして、緑に囲まれた立体的な学生の活動の場となっています。ルーバー等の外装は、フレームサイズと部材のバランスの確認、制作限界との調整やモックアップでの確認を繰り返し、調和のとれたデザインを完成させました。   教室棟を貫通する緑地(写真/滝田フォトアトリエ 滝田良彦)   赤土色の壁とルーバーデザインを継承する教室棟 (写真/川澄・小林研二写真事務所) 緑に囲まれた食堂棟(写真/滝田フォトアトリエ 滝田良彦)   キャンパスの景観デザインの継承 現地土壌の色である特徴的な赤土色の外壁を再現しています。創建時から引き継がれるキャンパス景観を美しく安全に再生するため、ルーバーは全て劣化調査を行い、外観に影響の少ない改修方法を丁寧に選択しました。外構改修では、マスタープランの骨格・美観を維持することを重視しながらも安全性、美観・機能性を確保した再生を行っています。誰もが憩えるようバリアフリー改修を行い、キャンパス全域の動線を活性化しました。 美しい陰影を持つキャンパス景観 (写真/川澄・小林研二写真事務所) 学生で賑わうメインストリート(写真/滝田フォトアトリエ 滝田良彦)   教室棟間の豊かに成長した緑地(写真/滝田フォトアトリエ 滝田良彦) メインストリートへ繋がる小径(写真/滝田フォトアトリエ 滝田良彦)   キャンパスの成長の歴史をアーカイブとして一般公開 アントニン・レーモンド自身がデザインした壁画と外部レリーフ、創建時のアルミサッシやガラスを工業的な遺産として保存しています。また、本プロジェクトの理念、設計上の要点、工事記録を「保存活用工事報告書」に取りまとめました。大学図書館内に展示コーナーを新設し、これらの記録を次世代へ確実に継承しています。 レリーフが象徴的なパッヘスクエア(写真/川澄・小林研二写真事務所) 壁画を活かしたG 棟のメインエントランス (写真/川澄・小林研二写真事務所)   大学図書館に新設したプロジェクトの展示コーナー(写真/南山大学提供)   学生の心地よい居場所 学生の居場所である教室などは、既存天井・壁の改修による耐震性能の向上やアルミサッシの撤去新設、換気設備の増設、什器・AV機器を再整備し、現代の教育環境に相応しい空間に改修しています。 コンクリート打放しの柱・梁、木製の壁を保全しながら、自然に囲まれた心地よい空間に再生しました。 学生の交流拠点となる開放的なコリドー (写真/川澄・小林研二写真事務所) 豊かな緑を望む学生食堂(写真/川澄・小林研二写真事務所)   新たな教育環境として再生したG30(600 人教室) (写真/川澄・小林研二写真事務所) 菱目梁を活かしたオープンな図書館閲覧室 (写真/南山大学提供)

PROJECTS

NEWS

2024.05.07
受賞ニュース
広東省優秀都市計画設計プロジェクト 受賞のお知らせ
横琴広東マカオ高度協力区都市デザインが受賞しました。
2024.04.24
受賞ニュース
照明施設賞 受賞のお知らせ
日本設計が携わった2プロジェクトが受賞しました。
2024.04.19
受賞ニュース
2024年日本建築学会賞(業績)受賞のお知らせ
「南山大学におけるモダニズム建築群の保存再生と大学キャンパスの成長デザインへの取り組み」において 日本建築学会賞(業績)を受賞しました。
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